近年、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症をはじめとする各種のアレルギーの病気が増加しています。その背景にはさまざまの原因が考えられています。それらを順番にご説明いたします。
1. アレルギーを起こす原因物質の増加
スギ花粉症は関東地方においては、平成12年及び13年の2年間にわたり、かなり猛威をふるいました。この原因のひとつとしては植林政策による、スギの木の増加があげられます。戦後、スギの木を次々と植林したためにこれらの木が成熟し花粉を飛ばすようになりました。スギ花粉症の原因であるスギ花粉が大量に空中に飛散すればスギ花粉症の患者さんの数は増加します。
小児気管支喘息においては、ハウスダスト中のチリダニが重要な原因物質であることが明らかになっています。このチリダニは人の血を吸うダニとは異なるため、布団や、じゅうたんの中に多数生息していますが、その存在にはほとんど気付かれていません。
このチリダニは気温が22~23℃以上、湿度が50~60%になると人のフケやゴミを食べて急速に繁殖します。近年のアルミサッシを使った気密性の高い建物は、チリダニの繁殖力に好都合な環境をつくり出しています。
2. 大気汚染
現在の東京の空気は以前のスモッグなどが発生していたころに比べると、汚染物質の数値が低くなっています。しかしながら現在の問題点は慢性低濃度汚染であると考えられています。大気汚染と気管支喘息の関係については不明の点もありましたが、近年の国を相手とした訴訟の判決にも表れているように、その因果関係は明らかになりつつあります。
特にスギ花粉症とディーゼルの排気の中に含まれる炭素化合物との因果関係は明らかになりつつあります。したがって今回、東京都がディーゼル車の排気につき規制を厳しくすることはスギ花粉症の予防のひとつとして評価されるべきと考えられます。
3. 食生活の変化
戦後の日本人の食生活において最も変化の大きかったものは、動物性脂肪の摂取量の増加です。これは乳がんや大腸がんの増加と関係があるだけではなく、高コレステロール血症やそれに伴う動脈硬化症などと密接な関係があることは良く知られています。しかし近年、これはアレルギーの病気を増加させる、言い換えれば体の中がアレルギー体質に傾きやすくなるその素地を作るということが明らかになってきました。日本の子供達の好きな食べ物はフライドチキン、ハンバーガー、ピザ、乳脂肪のたっぷり入ったアイスクリームなどです。これらは動物性脂肪を豊富に含むため、摂取しすぎると体の中はアレルギー体質に傾きやすくなります。
以上の3点以外にも、まだ多数の原因が考えられますが、今回は代表的な3点についてお話しました。